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U-SPORT ActionNews 第1弾
01 日本ブラインドサッカー®協会国際大会の舞台裏
― 成功の鍵は“並走”と“広がり”にあり
5月18日(日)〜25日(日)、大阪・グランフロントうめきた広場で開催されたブラインドサッカー®国際大会は、競技の迫力に加え、“場づくり”の観点からも高い評価を集めた。主催した日本ブラインドサッカー協会(JBFA)は、観客・企業・地域・メディアを巻き込みながら、競技団体の新たな可能性を示した。
「平日昼間でも、この熱気」― 集客の成果と若年層の来場
大会でまず注目を集めたのは、集客面での成功だ。
平日の13時という時間帯にもかかわらず、会場には多くの観客が詰めかけ、外国人比率も高く、観戦スタイルも多様だった。
「SNSやローカルメディアなど、積極的な広報活動を重ねた結果自発的に観に来てくれた方が45%、偶然通りかかって足を止めてくれた方が30%。特に若い世代の姿が目立ち、感触として“広がってきた”という実感がありました」と、広報担当は語る。
グランフロントの従業員、観光客、学生、ビジネスパーソンなど、都市の中でスポーツと偶然出会う空間が生まれたことは、競技普及においても大きな意味を持つ。
「スポンサーとともに創る」運営スタイルの進化
もう一つの成功要因として挙げられるのが、スポンサー企業との共創型運営だ。
メインスポンサーの株式会社ダイセルは、単なる協賛を超えて、社員が大会運営にも参画。
選手とともに動き、大会運営の場で奔走する体験は、ダイセルが持つ企業文化(社風)から生まれたJBFAならではの運営スタイルだ。
「CSRの枠を超えて“現場を知る”ことで、社員自身が競技の魅力や社会とのつながりを語ってくれる」と協会関係者は言う。
これはまさに、スポーツが“企業の人材育成”や“社会貢献”に本質的に貢献できるモデルケースである。
成功の裏にある“継続と蓄積”
一見華やかに見える国際大会も、その裏には長年の蓄積がある。全国各地で行ってきた地域イベント、小中学校での体験授業、選手とスタッフの地道な情報発信。それらの活動があったからこそ、今回の大会が「知らなかった人に届き」「次につながる出会いを生んだ」のだ。
02 日本パラ・パワーリフティング連盟が届ける
“重さの先にある、ちから”〜 教室で生まれる共感と変化
「バーベルを持ち上げる」——パラパワーリフティングを一言で表すとそうなるかもしれない。
しかし、競技に込められた力は、数字では測れない。
その本質を、小学校向けの体験教室の中で伝えようとする活動に力を入れている。日本パラ・パワーリフティング連盟が行っているのは、単なる競技体験ではない。“応援の力”や“挑戦する勇気”を育てる授業だ。
授業1:チャレンジの先に見える“応援のちから”
東京都の京橋築地小学校では、選手の挑戦を目の前で見た子どもたちが、自然と「がんばれー!」と声援を送る姿が印象的だった。
最初は遠慮がちだった声も、誰かが発した一言で一気に空気が変わる。
次第に、隣の友達に対しても「すごいね」と声をかける子が現れ始めた。
「この体験を通じて、“応援される喜び”と“応援する自分”の存在に気づいてくれたと思います」と連盟スタッフ。
まさに、バーベル以上に「人と人の心を持ち上げた」時間だった。
町田市立成瀬中央小学校では、“やったことのないことへの第一歩”がテーマ。バーベルを前にした子どもたちの表情には、最初こそ戸惑いがあったが、選手の姿を見て「自分もやってみたい!」という空気が生まれていた。体験後、ある児童が書いた言葉が印象的だった。「知らないことに向き合うのはこわい。でも、やってみたら楽しかった。」
授業2:決断力を育む
さらに成瀬中央小学校での交流授業では、「決断力」をテーマに据えた。
交流授業の狙いは、児童に「挑戦する前に諦める」や「失敗を恐れて挑戦しない」のではなく、たとえ失敗しても「次を考え、諦めずにまたトライする」よう促すこと。
選手によるデモンストレーションや、15kgまた25kgのバーベルを自分で選んで持ち上げる体験を通じて、「やってみる」こと自体の体験の大切さ、挑戦すれば「できる」という達成感を全員が味わうことに主眼が置かれた。
「上がるかどうか自信がなかったけど25kgを選んでみて、みんなの応援のおかげもあってうまくできてうれしかった」参加した小学生の感想が示すように、応援の力や、一歩踏み出す決断が新たな可能性を広げることを実感する場となるようパラパワーらしい工夫できたと連盟のスタッフは語る。
試合ではない、授業だからこそ起きた小さなドラマが、子どもたちの中に確かに何かを残していた。
課題を抱えながらも、歩みは止めない
もちろん、パラスポーツ団体としての課題もある。スタッフや講師を派遣するリソースには限りがあり、広報や資金面の確保も簡単ではない。
それでも、「目の前の一人ひとりと丁寧に向き合う」ことが、連盟の変わらぬ姿勢だ。授業をきっかけに、児童の家族や地域の人が競技に関心を持つようになることも多い。競技の普及と教育、そして地域とのつながりが、ゆるやかに、しかし確かに広がっている。
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